文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

フォトグラファー 田邊 剛 1981年生まれ。千葉県出身。2002年スタイリスト科卒業。卒業後、写真家の富永よしえさんに師事。2005年に独立し、雑誌、広告、ミュージシャン、俳優などの撮影を手掛ける。文化服装学院が撮影協力した、2011年『月刊EXILE』9月号<REMENBER SCREEN>では、卒業生で構成された撮影スタッフの一人として撮影を担当している。

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ライター 秋山 由佳里

文化服装学院ファッション流通専門課程卒業。編集プロダクションを経て、文化出版局『ミセス』編集部に在籍後、独立。フリーの編集・ライターとして活動。

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フォトグラファー 田邊 剛

フィルムが持つ独特の空気感をファッションや風景写真を通して伝えていきたい

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、メンズファッション誌を中心に幅広い分野で活躍するフォトグラファー、田邊 剛さんです。

在学中、夢中になった写真が現在の職業に

メンズのファッション誌、広告、ミュージシャン、俳優などでフォトグラファーとして活躍する田邊 剛さん。服飾とは異業種ともいえる写真に魅力を感じるようになったのは、文化に入ってからだそうで「スタイリスト科に入学してから、ファッションだけでなく、映像、建築などにも興味を持つようになりました。ファッション誌というよりも、当時よく見ていたカルチャー誌から写真、フォトグラファーの世界を意識するようになった感じです。学生時代は、仲のよかった友達にカメラを借りて、人物や風景などのスナップ撮影に夢中になっていましたね。ヨドバシカメラで1本100円ほどの安いフィルムを買って、文化の近くにあった文具店で現像してもらったりして。そんな日々の中で、趣味だった写真を、なんとなく仕事として考えるようになりました」

憧れのカメラマンのアシスタントに

写真を仕事にするためにはどうすればいいのか、アシスタントになるという知識もなかったという田邊さんの目に留まったのが一冊のカメラ専門誌。「雑誌でよく見ていた、富永よしえさんの事務所の連絡先が載っていたんです。アシスタントの募集はしていなかったのですが、履歴書と作品を送って、本人から連絡をもらうことができました」幸運にも採用が決まり、「戸惑いの連続だった」というアシスタント時代がはじまる。「初めて撮影現場に行ったときは衝撃的でしたね。スタジオの中に一つの空間を作りこんでいて、独特の空気が流れている感じでした。自分の写真は、偶然のタイミングで撮影したスナップばかりだったので、空気感をつくることを学びました」

約3年のアシスタント時代を経て、独立

アシスタント時代には、カメラの技術的なことだけでなく、社会人としての基礎知識、フォトグラファーとしての想像力の大切さを師匠に教わったという田邊さん。「師匠からの教えはもちろんですが、アシスタント時代にいろんな現場を見れたことは貴重な経験になっています。24歳で独立してからは、カメラの機材をそろえるためのお金のやりくりがたいへんでしたね。最初は、暗室なども友人に借りたりしていたんですが、師匠に『人に甘えるな』と怒られたことがあって…。自分で苦労して手に入れることで、大切にする気持ちや、重みがわかってくるんだと教えられました」そんな厳しくもやさしい師匠から譲り受けた写真右上の「NIKON F3」は宝物の一つだそう。



仕事道具でもあるお気に入りのカメラ。左から、8×10の大判カメラ、その上は「Kodak」の“スナップキッズ”、「PENTAX67 1型」、「Rolleiflex」、師匠から譲り受けた「NIKON F3」。

フィルム写真にこだわって

雑誌の分野でもデジタルでの撮影が一般的になっているが、田邊さんは今でもフィルム撮影、紙焼き入稿にこだわっている一人。「カメラに興味を持ったときからフィルムで撮影していたので、カメラのフォルムや重さ、シャッターをきる感触、緊張感などの気持ちの持ちかたが全然違うんです。クライアントなど、仕事先の媒体が紙焼き入稿を受け入れてくれることがまず必要ですが、写真のあがりの質感、空気感のイメージがつけやすい、ということもありますね。普段、ポケットに入れて持ち歩いているカメラもレンズ付きフィルム! iPhoneで撮影することもありますし、スマートフォンのカメラは画像を共有できるところが魅力ですが、撮っていて楽しいのはレンズ付きフィルムなんです」

今、興味があるのは大判カメラでの撮影

この取材をお願いした前日まではサンフランシスコ、2ヶ月ほど前にはハワイへロケに出かけていたという多忙な日々の中で、田邊さんの息抜きとなっているのがお気に入りのそば屋での一杯。「そばが大好きなんです。わざわざ遠くへ出かけるというよりも、生活圏の中のそば屋に行くことが多いですね。遅めの昼食に出かけて、日本酒を飲みながら本を読み、そばを味わって帰るのが休日の過ごし方です」目下のところ、田邊さんにとってのライフワークは模索中だそうだが、今、一番興味があるのは8×10(エイトバイテン)の大判カメラでの撮影。「カメラ市で本体を手に入れ、気に入っているレンズをつけて使っています。あがりの雰囲気が好きなので、もっと使いこなせるようになりたいですね」
※この取材内容は2012年10月時点のものです。


印画紙の箱に入れているネガフィルムの数々。
フィルム現像は現像所に依頼し、プリント作業は事務所の暗室で行なっている。


カメラ市で手に入れた8×10の本体。「すごく気持ちのいい写真が撮れるんです」


(左)湿度調節されているカメラの収納ボックス。
(右)紙焼きの作業で使う、写真の引き伸ばし機。


「PHIGVEL-MAKERS Co.」2012 Autumn and Winter Collectionのカタログより。


ファッション誌『GRIND』2012年5月号(ミディアム)より。

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