ブックタイトルファッション業界お仕事ブック

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概要

ファッション業界お仕事ブック

デザイナーと共に考えるテキスタイルの新しい可能性。 宇田川泰裕さんはシルクスクリーンプリントを中心に手がける染め職人。シルクスクリーンプリントとは、デザインが印刷された版を使って、特殊なインクを刷り込んでプリントしていく技法。一発勝負のプリント作業には慎重さと大胆さが必要だ。 奥田染工場では、プリントする際には必ずデザイナーに工場まで来てもらう。それは実際にプリントする工程を見ながら、デザインを相談したいという意向からだ。さらに、プリントで大切なのはインクの色づくり。色づくりは非常に繊細で、デザイナーとの感覚の共有が不可欠だ。「牛乳の色」を再現するため、デザイナーと一緒に牛乳を飲んだことも。そんな小さな共感から、デザイナーと感性を擦り合わせてテキスタイルが完成する。また、東京コレクションに参加する国内若手ブランドからの依頼が多い。奥田染工場では他の工場で実現できないようなチャレンジにも、とことん向き合ってもらえる。手作業の少量生産だからこそできるものづくりを追求しているため、こだわりの強いデザイナーから支持されているのだろう。 ファッションデザイナーになりたいと思っていた高校時代の宇田川さんは、小柄な自分に何が似合うのか、自分に似合う色や布地を探すことが好きだった。そこへ趣味のバイクが加わり、テキスタイルの道へ進むきっかけに。バイクをすべて解体して、また組み立てる……。構造を分解して物事を考えることが得意。それがテキスタイルのデザインに活かせると感じたのだ。文化服装学院では服の構造も学んだ。だからこそ生地がどのように使われるのかを理解し、デザイナーのやりたいことを読み取ることができるのだ。 工場への就職は考えていなかった宇田川さん。それが、講師として学校に来ていた奥田染工場の奥田さんと出会い、その独自のクリエイティブな姿勢に感銘を受け、入社を決めた。いざ入社して辛いことがあった時も、80歳の大先輩の職人の優しさや相手を思う気持ちに触れ、 「自分も一人前の職人を目指そう」 と気持ちを新たにしたのだという。 工場は華やかではないけれど、服のもとをつくる大切な現場。 「自分次第で大いに楽しめる場所なのでぜひ興味を持って欲しい」と宇田川さんは語ってくれた。1. インクの配合は気温にも影響される繊細なもの。 2. 過去に製作した版が並ぶ。 3. プリントした後に高温の釡で加熱しインクを定着させるベイキングという作業。321PROFILE :奥田染工場COMPANY :宇田川泰裕NAME :オクダセンコウジョウ / ハンドシルクスクリーンプリントを中心とした工場。東京コレクションに参加するブランドや若手デザイナーと日々新しい布を生み出す。染色技術を伝える勉強会なども活発に行っている。うだがわやすひろ / テキスタイルデザイン科卒業。1989年、千葉県生まれ。奥田染工場に勤めて7年。ハンドシルクスクリーンをはじめ、さまざまな手法でテキスタイル染色を手がける。多摩美術大学で講師も務める。Create 16テキスタイル染色それぞれのインクの特性に合わせた仕上げ作業哲学や心理学の本が好きな宇田川さん。自分にはないさまざまな考え方を知ることで、お客様が本当に伝えたいことなど、本質を読み取る力がつき、仕事に役立っていると感じている。さまざまな考えを知るMY GOODSBunka Fashion College 1. Create 42