文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

イラストレーター 高篠 裕子 東京都出身。2005年アパレルデザイン科を卒業。セツ・モードセミナーを経て、イラストレーターに。2008年、イラストレーターのマネジメント業務(pict)を運営している“アスタリスク”と専属契約を結ぶ。現在は雑誌や広告、CDジャケット、商品カタログなどのイラストで幅広く活動中。9月2日より、高島屋をはじめとする百貨店で展開するISSEY MIYAKE INC.の新コンセプトショップ「24 ISSEY MIYAKE」にて、オリジナルイラストを用いたTシャツを販売中。

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ライター 武田 京子

日本大学芸術学部放送学科在学中、文化服装学院II部服装科に入学、卒業。文化出版局『装苑』編集部に在籍後、いくつかの編集部を経て2005年よりフリーの編集・ライターとして活動。

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イラストレーター  高篠 裕子

素晴らしい人たちとの出会いが私をイラストの道に導いてくれました

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「NEXT!」。今回ご登場いただくのは、微細なディテールのイラストが多方面から注目を集める、新進気鋭のイラストレーター・高篠裕子さんです。

イラストで一本立ちすることの難しさ

雑誌や広告の挿絵など、各ジャンルで引っ張りだこのイラストレーター・高篠裕子さん。温かみのあるユーモラスなイラストは、目にしたことがある人も多いのではないだろうか。高篠さんはイラストレーターになって今年で4年目。現在はマネジメント事務所“アスタリスク”と専属契約を結び活動の場を広げているが、「イラストレーターになったからといってすぐに仕事が来るわけでもなく、最初の1~2年は美術館でアルバイトをしながら活動していました。そんなときフリーのイラストレーターであり、学生時代にデザイン画を教わった吉岡香織先生がアスタリスクを紹介してくださり、イラストレーターとして一本立ちする可能性が開けていきました」

運命を切り拓いた線画のイラスト

仕事の幅が広がったのは、線画という“自分らしい”タッチを確立させたのが大きなきっかけだとか。「今メインに描いている線画は、アスタリスクのスタッフが面白いと興味を持ってくれて、クライアントに売り込んだことから仕事につながりました。経験が浅いころはとにかく一杯絵を描いて、スタッフにアドバイスをもらっていました。スタッフに『めげないよね』と感心されるくらいの枚数を見せたのですが、そこで感じたのは自分で思う私らしさと、周りが思う私らしさは違うということです。線画のイラストも自分としては遊びで描いたものなので、もし客観的に見て魅力を認めてくれる人がいなければ世に出ることはなかったと思います」

イラストの活用の場は無限大

物心ついた頃から絵が好きで、絵に関係した仕事に就きたいと思っていた高篠さん。「でも、絵と同じくらいファッションのことも好きだったので、やってみて自分にはどちらが向いているのか見極めようと思いました」と、アパレルデザイン科に進学。最終的にイラストの道を選んだ高篠さんは、ファッションとは遠く離れたところで仕事をするかに思われたが、オリジナルイラストがTシャツデザインに採用されるなど、実はファッション業界に深く関わる仕事にも携わっている。「イラストとは一見関係のない世界でも、思わぬところでイラストが使われていたりするので、自分の知らないところにまだまだいろんなチャンスが転がっているのかなと思います」


太陽の光が差し込む気持ちのいいアトリエ。アトリエの至る所に、高篠さんが大好きな花や植物が置かれている。

大切なのは人とのつながり

基本的に会社に所属せず、フリーランスとして仕事をしていくイラストレーター。「イラストレーターにどうやってなるのか?」という部分は非常に気になるところだが…。「実は、私もよく分かりませんでした(笑)。ただ、学生時代の担任の先生がおっしゃった『あなたがイラストレーターと言えば、もうイラストレーターなのよ』という言葉に納得して、まだ仕事がないうちから名刺を作って周りに配ったり、作品ファイルを作っていろんな人に見てもらったりしました。そのときは仕事につながらなくても、人と人が意外なところでつながっていたり、ひとりの人との出会いがネットワークを大きく広げたりすることもあるので、人とのつながりは本当に大切だと思います」

多彩なタッチに対応していきたい

以前、電車の車内吊り広告のイラストを描いたときは、「何気なく乗った電車で、自分のイラストを見たときは嬉しかったです」と高篠さん。とはいえ、イラストレーターはクライアントから依頼が来て始めて成り立つという厳しい仕事。「今はひとつひとつの仕事を着実にやることが経験となり、クライアントの信頼を得ることにつながると思います」と語る。また、現在は線画を中心にしながらも、多彩なタッチに対応して間口を狭めないようにしているそう。「ひとつの作風で勝負するのもいいですが、私はいろんなタッチの絵を描いて、クライアントさんの幅広い要望に応えていきたい。そういうスタンスのイラストレーターがいてもいいかなと思います」
※この取材内容は2009年8月時点のものです。


写真を元にイラストを描くことが多い高篠さん。好きなフォトグラファーは、アンリ・カルティエ=ブレッソンとエリオット・アーウィット。


「イラストを描く作業はけっこう孤独ですね」と高篠さん。 仕事中はJ-WAVEをかけながら黙々とペンを走らせているそう。


取材中、ガラスペンを使った線画を披露してくれた高篠さん。 描き始めると会話がなくなり、プロのイラストレーターの表情に。


使い込まれたパレットと、愛用のガラスペン。ガラスペンはイラストのテイストによって数本を使い分けている。

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