文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

(有)ハンズワークス PHABLICxKAZUIデザイナー 瀧澤 日以 1979年生まれ。神奈川県出身。2001年アパレルデザイン科卒業。その後舞台・映画・PVなどの現場で様々な衣装製作に関わる。フリーランスとしての活動を経て2008年現メンバーと共にグラフィック製作会社HANDS WORKS.CO内にPHABLIC x KAZUI (ファブリックバイカズイ)を立ち上げ、オーダーや一点物の洋服を中心としたアパレルとアクセサリーの販売、衣装製作を中心に活動中。自身のホームページなどではグラフィックデザインも手掛けている。

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ライター 小仁所 木綿

文化服装学院スタイリスト科を経て、ファッション流通専攻科ファッションディレクター専攻を卒業。ストリートカルチャー誌の編集部に在籍した後、独立しフリーの編集・ライターとしてファッション、ビューティ、音楽、ダンスなど幅広い媒体で活動中。

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(有)ハンズワークス PHABLICxKAZUIデザイナー 瀧澤 日以

その次に繋がっていくコミュニケーションになるような洋服

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、ブランドPHABLIC x KAZUIのデザイナーであり、衣装製作やグラフィックデザインなども手掛ける、瀧澤日以さんです。

在学中から衣装製作に携わる

独創的なアートセンスで独自の世界観を提示するブランドPHABLIC x KAZUIのデザイナーである瀧澤さん。洋服のデザインだけでなく帽子やアクセサリー、さらにグラフィックデザインまでもこなすクリエイターだ。瀧澤さんはデザイナーとして働く前から衣装製作の仕事をしていた経緯がある。文化在学中の3年次から映画の衣装関係者らと同居し、そこで自分のアトリエを持ち製作をしていた。当時はスタイリストやアーティストの衣装製作を請け負っていたそう。アパレルデザイン科を卒業後、工科専攻科に進学したが卒業制作期間にあたる後半には卒業を待たずに仕事の道へ。「その時期には仕事に入りたくて、仕事を引き継ぎながら旅に出たりして色んなものを見ましたね。色んなところに行って色んな人たちに出会いました」。この経験は瀧澤さんにとってとても大切なものとなったようだ。

自分のやりたいことを見つけてその道をいく

文化への入学を決めたのは、手に職をつけたかったからだという。服作りに興味があったというよりは、デザインに興味があったそう。「デザインっていったら洋服じゃないかっていうノリで入ったんですよ。初めは何も出来なくて残念な学生だったと思いますよ。でも途中で色々と刺激をもらって後半は頑張りましたね。初めて好きなものが見つかった気がしました」。工科専攻科をやめて半年間の旅から戻ってからは、衣装製作のアシスタントや、自分で作った服をセレクトショップで売ったりするように。就職など仕事に対する不安や焦りはなかったのかと聞くと、「在学中に色んなアルバイトをしていたのでパイプが太くて、仕事に関する不安はあまりなかったですね。自分で決めて自分のやりたい事のためにお金を貯めてっていう生活をしてましたね」。

会社へ所属しアトリエを立ち上げ本格的に活動

はじめは個人で活動をしていて、作った服がセレクトショップで販売されるようになっていた。「だけどセレクトショップ主導でやりたいと言われたり、ビジネスの仕方も知らなかったし、衣装製作の仕事も忙しかったのもあって、デザイナーの仕事を一旦ストップしたんです」。やがて07年から現在の会社の所属になるが、もともと同社でフリーランスのスタイリストとして働いていた。グラフィックデザインの会社ということもあり、ここでグラフィックデザインを教わりながら習得していく。現在ではホームページのデザインを自ら制作するまでに。「もともと衣装をアシストや下請けでやっていた時はクライアントが大きくて、テレビや映画、舞台、CMとかの仕事をやっていました。でも今はもっと若手の方だったりするんですが、規模は違っていてもおもしろいですね」。


アトリエ内のデスクではPCでデザイン作業も行う。


書斎にある大きな本棚には服作りに関する本や洋書などがぎっしり。

腐敗していくモノではなく、繋がっていく有機的なモノ作りを

ブランド名にもなっている「PHABLIC」とは、一般的にマスやパブリックという大枠で括られる人や社会を、1本1本の糸のように細分化して、新しいコミュニケーションを生み出すためにもう一度織り直した新しい「布=ファブリック」を作るという思いを込めた造語で、これが自身の中のテーマでありブランドコンセプトとなっている。そしてそれを基にして作り出す全てのモノ・コトが繋がっていけばというのが瀧澤さんの思いだ。しかしまだ模索しているところもたくさんあるという。「有機的な物の作り方、腐ってなくなってしまう物じゃなくて、発酵してより良くなるものっていう考え方。その次に繋がっていくコミュニケーションになるような洋服の在り方、商売の在り方っていうのを作っていきたいと思っています」。

自分たちの作った物をもっと多くの人に伝えたい

仕事のやりがいを聞いてみると、「きちんと目の届くところに物が辿り着いてくれるのが嬉しいですね。そしてそれを感じられるのは作った物を渡した時。それを感じ続けられるような物作りの仕方をしたいし、驚かせてあげたいし楽しませてあげたいっていうのがあります。着て楽しい、買って楽しい、ここに来て楽しいっていう状況をもっと作りたいですね」。そして、PHABLICxKAZUIとしての活動をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと、最近やっと思うようになったそう。「自分の周りにいる人たちが見えるようになって、非常に良い仲間が集まってくれているので、こういう人たちが真剣に作ったらきっと良い物が出来ると信じているので、それをもっと色んな人たちに見てもらいたい。今はアトリエショップなんですけど、いつかは自分たちのお店を持つっていうことを目標にやっていきたいですね」。
※この取材内容は2010年12月時点のものです。


知り合いの古着屋さんの倉庫で見つけたアンティークの生地見本と仕様書。


アトリエにて開催されているワークショップの様子。


(左)大きな作業台でのミーティング風景。(右)アトリエ内には新作サンプルが並ぶ。


(左、中)2008年S/Sコレクションより。
(右)モデルの梨花が「梨花新聞」で着用した衣装(2009年S/S)。


(左)2009年S/Sコレクションより。(中)2009年A/Wコレクションより。(右)2010年S/Sコレクションより。

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