文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

ELIMINATORバイヤー/KUBRICKデザイナー 野澤 圭介 1979年生れ。千葉県出身。1999年スタイリスト科卒業。卒業後、原宿の古着屋「VOICE」でショップスタッフとバイヤーとして3年務める。その後現在のショップ「ELIMINATOR」へ入社し、ここでもショップスタッフとバイヤー業に携わる。約10年に及ぶバイヤーとしての経験を積んだ2011秋冬に、自身のブランド“KUBRICK”を立ち上げ、現在はデザイナーとしても活動をスタート。

writer

marmelo エディター 吉田 歩

文化服装学院服装科卒業。文化出版局で編集アシスタントとして活動後、アパレル企業でデザイナーを経験。その後、マルメロに在籍しナチュラルファッション誌「クシュフル」の編集に携わるほか、ウェブショップの運営も手がける。

マルメロの公式サイト

writer

ELIMINATORバイヤー/KUBRICKデザイナー 野澤 圭介

デザイナーとバイヤー2つの側面を活かして進んでいきたい

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、代官山のセレクトショップ「ELIMINATOR」のバイヤー兼“KUBRICK”のデザイナーである野澤圭介さんです。

20代で築いたものが開花し始める

代官山のショップ「ELIMINATOR」のバイヤー・野澤圭介さんは、2011年秋冬にメンズブランド“KUBRICK”を立ち上げ、現在同ブランドのデザイナーとしても活動を開始したばかり。20代で学んだことや温め続けた服に対する想いが、30代になった今、ブランドを立ち上げる糧となった。立ち上げに際して、ここ数年の経済的な社会背景を心配し、友人から様々な忠告もあったが「逆にこういう時代だからこそやってみることで可能性というより、価値として残すことができるのではないかと思いスタートしました」と話す。

古着の世界で築いた礎

進学して更に深い勉強をするよりも、早く社会に出て働きたいという気持ちが強かった野澤さん。文化卒業後は学生の頃から興味があった古着の世界へ進み、老舗である原宿の「VOICE(ヴォイス)」でアルバイトとして働くことに。「その時は古着から感じ取れるセオリーやバックグラウンドにすごく興味がありました」。「VOICE」では、とにかく先輩から仕事の知識やノウハウを学び、2年目の21歳の頃に初めて買い付けに同行。当時を振り返り「本当に運が良かった」と話す。ロサンゼルスに住んでいる社長のもとへ行き、社長が自ら開拓した古着を買い付けるネットワークやコネクションに触れ、現場の空気やビジネスの流れを勉強すると同時に、古着1点1点に対してもっと奥深い視点の持ち方も学んだ。

本格的にバイヤーとしてパリへ

約3年古着屋でさまざまな経験を積んだあと、現在のショップに入るきっかけをくれたのは古着屋でお世話になった先輩だった。当時オープンしたてでいろいろなイベントを企画していて、ヘルプで働くようになったのが始まり。その後、正式にショップスタッフになる。少数精鋭の会社のため、ショップスタッフといってもプラスアルファで仕事を任せてもらえたことが成長につながったという。野澤さんの場合はショップスタッフとバイヤーを兼任。ある日、突然社長からの「パスポート持っているか?」の一声でパリコレクション期間中にバイイングへ飛び、本格的にバイヤー職に携わることになる。今では毎シーズン一人でパリに買い付けに行くまで任されるようになった。当時社長に教えてもらった「とにかくクリエーションに対する嗅覚を鋭く、アンテナを高く、いろんな角度からものを見るように」という感覚的なことは今でも仕事をしていく上での教訓になっている。


デザイナーの想いをダイレクトにお客さまに伝えられるような接客を心掛けている。


独学で始めたアクセサリーはものづくりのスタート地点。オリジナルボックスにもこだわりが。キーリング¥15,000

バイヤーについたからこそ見えてきたデザイナーへの道

毎シーズンファッションのスタート現場に出向き、新鮮な刺激を肌で感じることができるバイヤーという仕事は、世界中で活躍しているデザイナー達の作品を自分の目で見て直接話を聞ける立場にいる。彼らのクリエーションに対するこだわりや、自己表現に対するスタンスに触れているうちに野澤さんの中にも「何か作りたい!」という衝動が起きた。「バイヤーがバイイングをしてショップを作り上げていくのと、デザイナーがデザインを考えコレクションを作っていくのはとてもよく似ていると思います」。2つの職種の「作り上げる」という共通した部分が野澤さんを大きく動かした。自分がやりたい事を社長に言うと、「やりたいことがあるならやってみたらいい」と後押しされた。最初はアクセサリーやシューズのデザインをする活動から始まり、先シーズンは初めて自身の力だけでコレクションを発表するに至った。

一段一段、階段を上っていくように

今は、「ELIMINATOR」のバイヤーの仕事と、“KUBRICK”のデザイナーの仕事でめまぐるしく過ぎていく毎日で、休日もなければ昼も夜も関係ない生活が続いている。しかし辛いと感じることはないそう。先シーズン初の展示会を開いてみて次への課題が見つかった。「次への課題」というものは続けていく上で必ず沸いてくるものということにも気がついた。そして「そこをクリアしないと自分の中で納得できないし、クリアできないまま止めるわけにいかない。まだまだやらなければいけないという気持ちのほうが今は大きいです」。
※この取材内容は2011年12月時点のものです。


仕事道具のパソコンと学生時代から愛用している“プロジェクトペーパー”、そしてお気に入りの“MOLESKINE”の手帳。


「ELIMINATOR」はUKテイストをベースにしたセレクトショップ。代官山のキャッスルストリートに位置している。


(左)1階はUKのトラディショナルな古き良き英国をイメージしている。
(右)2階はファッション性が強くデザイン性の高いものやモードなものが並ぶ。
3階はギャラリースペースとして期間限定ショップなども開催している。


(左)英国の自転車のブランド“BROOKS”のサイクリングジャケット。(写真はバックスタイル)
(中)英国を代表するニットメーカー“Corgi”と“KUBRICK”のコラボカーディガン。
(右)店内にはLEVI’Sのデニムも多く並ぶ。


“KUBRICK”のアイテム。ドイツの美術・建築学校“Bauhaus”のデザイン理念をファッションのフィルターを通して現代的に表現するのがコンセプト。(左)ブルゾン¥42,000 (中)ブラウス¥18,000 (右)パーカ¥28,000

Links
NEXT

INDEX PAGE/今まで登場した卒業生たち

PAGE TOP