文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

ファッションディレクター 保科 路夫 1981年生れ。埼玉県出身。スタイリスト科を経て、2002年ファッション流通専攻科ファッションディレクター専攻卒業。在学中より同校卒業生のファッションディレクター谷岡万城男さんの元で働く。現在、谷岡さんの会社「bon」に所属。

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marmelo エディター 秋山 美紀子

文化服装学院卒業後、文化出版局へ入社。「装苑」の編集者を経て独立。独立後も「装苑」誌上にて「ニューカマー」のコーナーを連載するほか、さまざまなファッション媒体で活動中。また「ウェブセレクトショップマルメロ」のオーナーや、ファッション学校やセミナーの講師も行なっている。

マルメロの公式サイト

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ファッションディレクター 保科 路夫

空間を使ってイメージを具現化する。そこで生れる空気感を伝えたい。

次世代のファション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。記念すべき第1回目にご登場いただくのは、コレクションやファッションイベントなどの演出を手掛ける保科 路夫さんです。

空間を使ってどうアプローチするかが、僕の仕事

東京コレクションでは人気ブランド “ファクトタム”や “シアタープロダクツ”の演出を手掛けるほか、ブランドの展示会やパーティなどの空間作りまで、ファッションを軸にさまざまなディレクションを担当する保科さん。演出家、ファッションディレクター、ショーディレクターなど肩書きは特に決めていないという。「モデルが歩くショーでも、展示会でも、空間を使ってどうアプローチするかを考えるので、あまり意識は変わらないですね」

プロとしての自覚を持ったきっかけ

初めて一人で仕事を任されたのはアシスタントについてから、2年ほど経った頃、ブランドの展示会だった。その後、ショーを手掛けることになるが、その会場となったのが母校である文化服装学院のホール。「コンテストのショーだったのですが、こういう場合は過剰な演出をつけると、そこで合否が変わってくることもある。だからこそ、いかに段取りよくやるかが大事でした」馴染みのある場所ならば、安心してできたのでは?「すごく焦りました。笑。仕事としてお金をもらっているということで責任感が違ってきますし、クライアントからしてみれば、キャリアが1年目でも10年目でも同じ。プロとして僕のことを見ているわけですから」

「制作」と「演出」では、使う脳みそがまったく違う!?

一見華やかに見えるディレクターという立場の仕事だが、そこには相反する「制作」と「演出」という2つの柱がある。「僕の仕事は制作をしながら、演出もこなします。制作は、タイムスケジュールを組んだり、様々な発注をします。そしてなにより、予算の調整があります。演出は、照明やモデルの動き方、全体のメージを考えたり。まったく使う脳みそが違うのです。ときには、演出したいことと予算が合わないという葛藤も。これらを別々に担当するところもありますが、僕は予算もわかりながら、それに伴った演出で、よりよいものを提案していきたいです」


いつも持ち歩いている“アーツ&サイエンス”のポーチの中には、“Q-pot”デザインのフリスクケースと、学生時代の先輩からもらったお守りが…。

ニュートラルでいることが、逆に客観的な意見を生む

「その時々に応じた演出が大切だと思っています」という保科さん。「僕は音楽や映画、本など深い知識があるとか、パソコンや映像作りが特別に得意だとか、そういうことがない分、客観的にそれが演出に合っているかどうかを判断できると思います。もちろん、どのジャンルも多少の知識はありますが、詳しすぎてしまうと、自分の意識が強くなることもある。知っておく分には問題ないけれど、変にウンチクを言うよりは、いつもニュートラルでいられることも大事だと思います」

街の音を聴くことが、情報収集になる

いつも持ち歩く荷物の中に「iPod」がある。音楽を聴いているのかと思いきや「音楽はあまり聴かないです。街の音を聴いているほうが好きなので。こんな店ができたとか、今はこういう着方が流行っているなあとか、こういう会話をしているんだとか。街からは情報が入りやすいですよ。情報というより“感覚的”なもの。情報はネットでも得られますが、ネットの情報は若干薄いので。感覚は自分で体感していかないとわからないですよね」もっぱら「iPod」は、ショーの構成を考えるために、ストップウォッチ機能として使用しているそうだ。

今やっていることを丁寧に積み重ねていく

学生のとき特別講義で、ボスである谷岡さんの仕事を知った。そのとき、谷岡さんにアプローチしたことがきっかけとなって、そのまま在学中からアシスタントになった。今後の保科さんの目標を聞いてみた。「今はまだ、精一杯な状態。僕は小さなことにすごく悩むタイプ。それは演出における些細なこだわりでもあるのですが、積み重ねてやっとそこに行き着くみたいな感じ。ひとつひとつできることを丁寧にやっていく、そんな精神でこれからも続けていきたいですね」
※この取材内容は2009年4月時点のものです。


“コム デ ギャルソン”のポーチには、仕事道具であるiPodを入れて。


クオバディス手帳の革カバーは、スタイリスト科の同級生で革職人であり、絵描きの小川弘記さんの作品。


シンプルなインテリアでまとめられた事務所。デスクは、資料や物を置かず、パソコンと電話のみで驚くほどきれい。


2009-‘10秋冬“ファクトタム”コレクションより。サイトのトップ写真も同ブランドのもの。会場には、幻想的な森が演出された。


2009-‘10秋冬“シアタープロダクツ”コレクションより。
家族団欒をイメージして舞台をテーブルに見立てた。テーブルクロスを敷き、ランプシェードを下げた演出がユニーク。

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