文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

衣装デザイナー 井上 武 1977年生まれ。福岡県出身。2005年アパレルデザイン科を卒業後、同級生の惠藤高清とともに(有)kod(コッド)を設立。衣装やコスチュームデザイン、グラフィックデザインなど幅広いジャンルで創作活動を展開。2008年、自身のブランドであるt.iをスタート。

writer

ライター 武田 京子

日本大学芸術学部放送学科在学中、文化服装学院II部服装科に入学、卒業。文化出版局『装苑』編集部に在籍後、いくつかの編集部を経て2005年よりフリーの編集・ライターとして活動。

writer

衣装デザイナー  井上 武

出された条件下で一番格好いいものを作る。それが僕の目指す“デザイナー”の姿

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「NEXT!」。今回ご登場いただくのは、オリジナルブランド“t.i”(ティーアイ)をはじめ、幅広いクリエーション活動を行うデザイナーの井上 武さんです。

枠組みを作らず、依頼が来たものは何でも制作

アーティストのライブ衣装や、テレビ・CM・映画・舞台の衣装、はたまたキャラクターの着ぐるみからプロレスラーのリング衣装まで、ファッション業界という枠を超えてデザイン&制作活動を行う井上 武さん。「もともと『ミシンと布で何かを作りたい』というところから出発しているので、『私たちのコンセプトはこうで、こういうものしか作りません』といったことがありません。カフェのスタッフのTシャツでも、普通の奥様のドレスでも、プロレスラーのマスクでも、頼まれればなんでも面白がって作ります」

限られた納期と予算の中で、一番格好いい衣装に

現在、仕事の中で大きな比重を占めているのが衣装制作。手掛けるものはそのつど異なり、仕事をする相手もスタイリストやイベントの総合プロデューサー、CM制作会社やタレント事務所のスタッフなど多岐に渡る。案件によって求められるものも違ってくるが、「それは大きな問題ではなく、気持ちの切り替えも特にしていません」と井上さん。「まずは相手の要望があって、納期や予算を考えながら一番格好いいものを作ろうという思いでやっています。それに対象が何であれ、一生懸命やるというスタンスに変わりはありません」

オリジナルブランドでは好きなものを表現

2008年からは自身のクリエーションを、ブランド“t.i”として発表している井上さん。「自分の趣味を突き詰めたキワモノだったりするので、バイヤーさん受けは決してよくないです(笑)。でも、スタイリストさんからの問い合わせは多く、t.iの服が雑誌『装苑』に載ったときは、それを見たスタイリストの岡田さん*が気に入ってくださって、映画『曲がれ!スプーン』の衣装に使われたという経緯もあります。t.iはデザイナーというよりも作家的な活動の場なので、展示会やコレクションを絶対しなきゃいけないというルールもないですし、自分たちの好きなことができればいいかなと思っています」
*Vol.005に登場の、スタイリスト・岡田 敦之さん。


上目黒の住宅街に佇むアトリエ兼プレスルーム。打ち合わせなどの移動には、大好きなバイクを使うことも多いのだとか。

学生時代の出会いが、現在の活動のきっかけに

井上さんは、アパレルデザイン科の卒業とともに同級生の惠藤高清さんと会社を設立。現在は、同じく同級生のパタンナー・北村冴子さんと3名で協力体制を取っている。「学生時代、周りが服のコンセプトやテーマについて話しているのに正直ピンと来なくて、『服が格好よければそれでいいのでは!?』と思っていたんですが、同じく『コンセプトってよく分からない』と言っていたのが惠藤で(笑)。それで意気投合して、何か一緒にやろうと会社を興したので、そういう意味では、文化でふたりが出会ったことが大きかったと言えます」

喜んでくれる人がいる限り、クリエーションを続けたい

衣装制作もオリジナルブランド運営も、今後は活動の裾野をもっと広げていきたいという井上さんだが、「でも、自分たちが作ったものを喜んでくれる人がいて、それで利益が生めればいいかなという気持ちがベースにはあります。依頼を受けてから納品までの猶予が3日というタイトな仕事や、企画が途中で頓挫したり、スタッフの板ばさみになったりするなど大変なこともありますが、最終的に相手が喜んでくれるのを見ると、『僕が目指していたデザイナーって、つまりこういうことなのかな』としみじみ思います」
※この取材内容は2009年7月時点のものです。


布地のストックが所狭しと置かれたアトリエ。アトリエ横にはt.iの洋服を貸し出すプレスルームがある。


デザイン画を仕上げる井上さん。
「『あのアイドル着たら似合うだろうな』とか、妄想しながら描いていることもあります(笑)」と井上さん、


役割分担はきっちりされておらず、メンバー3人が協力してひとつのものを作り上げている。


井上さんが手掛けた衣装や作品の一部。「将来的には、ひとつの仕事にディレクション的立場で関われたらいいですね」

Links
NEXT

INDEX PAGE/今まで登場した卒業生たち

PAGE TOP