文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

有限会社クラウン everlasting sproutデザイナー 村松 啓市 1981年生まれ。静岡県出身。2003年ニットデザイン科卒業。卒業後にイタリア リネアピウグループにて特別研修生として留学。帰国後、文化ファッションビジネススクールに入学。everlasting sprout を設立。現在はショーやインスタレーション等でコレクション発表を中心に、衣装やニット作家としても活動している。

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ライター 小仁所 木綿

文化服装学院スタイリスト科を経て、ファッション流通専攻科ファッションディレクター専攻を卒業。ストリートカルチャー誌の編集部に在籍した後、独立しフリーの編集・ライターとしてファッション、ビューティ、音楽、ダンスなど幅広い媒体で活動中。

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有限会社クラウン everlasting sproutデザイナー 村松 啓市

ニットカルチャーをもっと自分らしい形で表現していきたい

次世代のファション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、ブランドeverlasting sproutのデザイナー、村松啓市さんです。

イタリアでの経験で学んだこと

類稀な感性でニットの可能性を追求し続けるブランド、everlasting sprout。そのデザイナーとして活動する村松さんは、クラウンという会社の代表取締役となり様々なニットの企画や生産を請け負っている。ニットデザイン科を卒業したと同時に、文化服装学院を通じてイタリアの糸の会社にデザインチームのアシスタントとして参加した経験を持つ村松さん。そこでは主にコレクションブランドにデザインの提供、色や技術の使い方などを提案する業務を行っていた。実際そのプロジェクトに参加した期間は3ヶ月ほどだったそうだが、その3ヶ月間の経験はかなり大きなものになったという。「文化在学中に技術と知識はすごく叩き込まれるので、イタリアで覚えた技術と知識ってほとんどなくて、作り方と見せ方、簡単に言うと表現方法を学んだって感じですかね」。

ブランド立ち上げと同時にBFBへ入学

1年ほどして帰国し、同時にブランドを立ち上げた。さらにBFB(文化ファッションビジネススクール)に入学。ブランドを立ち上げながらなぜまた学生に? と不思議に思うが、「学生をしながらブランドをやろうと思ったのは、会社経営や服作りについてまったく知らない立場だったので、所属していた方がいいと思ったのと、学校の設備を自由に使えるっていうのも魅力だったんですよね。特にニットはミシンだけでは作れないので。在学中に服を作ってブランドとして形を作ろうと思ったんです」と村松さん。そこからコレクションをスタートして現在までに12シーズンを終えている。ブランドがある程度形になったのを機にBFBを1年で修了。そしてeverlasting sproutは本格的にファッション業界に進出していく。

未開拓なニットに可能性を感じて

ニットを専門に扱うブランドということだが、そもそもなぜニットに興味を持ったのだろうか。「文化で服について勉強しているうちに、たまたまおもしろいと思ったのがニットだったんです。可能性を感じたんですよね。古いもの、刺繍やレースなどの手工芸ってほとんどニットの技術で、未開拓だなって思ったんです。ニットには色んな表現方法があるのに、そのおもしろさが世の中にすべてあるわけではないと思ったし、色んなことをやってみたいなと思ったんです」。デザインをする際には、基本的に自身の体験すべてをデザインに落とし込むという。過去の体験や、見たもの、聞いたもの、読んだものなど、村松さんの日常、日々感じているものすべてが服作りのヒントとなっているようだ。


ショップの壁には様々な種類の糸が並び、販売されている。

表現方法のひとつとしてのショーの魅力

ブランド立ち上げから6年。毎シーズン、デザインコンセプトを何かしらの形で表現する活動を行ってきた。インスタレーションは常に行っていたが、ライヴで見せるという舞台表現がある意味人の心を揺さぶるとてもよい表現方法だと思い、07-08年のA/Wからショーを行うようになった。「やっぱりショーは楽しいし、お客さんの心を引っ張ってきやすいですよね。結局はライヴで何かやるということは、その人の時間を強制的に持ってくるってことだと思っているので」。ショーを見て涙を流して感動してくれたり、服を喜んで買ったくれた時に仕事のやりがいを感じるという。さらに「僕も作り手で職人気質なところがあるので、自分の作りたいものやイメージしたものが形になった時っていうのはすごく気持ちがいいですね」。

ニットカルチャーを自分らしい表現で伝えていきたい

青山に構えるショップ「青山Knitting Works」は半年ほど前にオープン。コンセプトは、もの作りの方とお客さんとの繋がりを持たせてあげられるようなお店。そしてもの作りの背景がわかるようなワークショップを月に1~2度、作家さんに開催してもらっている。「もの作りやデザインに対しての感覚が近くにあった方が感じ方が違うと思うんです。それにやっぱりお客さんの顔が見れるっていうのが嬉しいですね。それによってデザイナーとしても成長できると思いますし」。今後も妥協せずに今まで通りしっかりしたものの作り方と伝え方をしていきたいという村松さん。「ニットカルチャーをもっと自分らしい形で表現できていけたらいいなと思っています」。
※この取材内容は2010年10月時点のものです。


ショップ内にある糸の撚り機。実際に使用することもたまにあるとか。


(写真左)「不完全」をテーマにデザインされたショップの内装。
(写真右)ラックに並ぶ今季(2010-2011 A/W)の新作。鮮やかな色使いが目を引く。


(写真左)ショップで販売しているオリジナルの糸や小物。パッケージもかわいい。
(写真右)ショップにて毎月開催されているワークショップの様子。


(写真左)宮沢賢治の「注文の多い料理店」がテーマになった2010-2011 A/Wコレクション。
(写真中)2007年にイタリア ピッティ フィラーティーの展示会で発表した、童話「ラプンツェル」をテーマに制作したニットのアクセサリーのコレクション。
(写真右)2008年「ウールマーク・プライズ」に出品した衣装。世界中から選抜された10 ブランドのひとつとしてファイナリストに選ばれ、ソニアリキエル氏など多くの有識者から高い評価を得た。

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