空間を使ってどうアプローチするかが、僕の仕事
東京コレクションでは人気ブランド “ファクトタム”や “シアタープロダクツ”の演出を手掛けるほか、ブランドの展示会やパーティなどの空間作りまで、ファッションを軸にさまざまなディレクションを担当する保科さん。演出家、ファッションディレクター、ショーディレクターなど肩書きは特に決めていないという。「モデルが歩くショーでも、展示会でも、空間を使ってどうアプローチするかを考えるので、あまり意識は変わらないですね」
プロとしての自覚を持ったきっかけ
初めて一人で仕事を任されたのはアシスタントについてから、2年ほど経った頃、ブランドの展示会だった。その後、ショーを手掛けることになるが、その会場となったのが母校である文化服装学院のホール。「コンテストのショーだったのですが、こういう場合は過剰な演出をつけると、そこで合否が変わってくることもある。だからこそ、いかに段取りよくやるかが大事でした」馴染みのある場所ならば、安心してできたのでは?「すごく焦りました。笑。仕事としてお金をもらっているということで責任感が違ってきますし、クライアントからしてみれば、キャリアが1年目でも10年目でも同じ。プロとして僕のことを見ているわけですから」
「制作」と「演出」では、使う脳みそがまったく違う!?
一見華やかに見えるディレクターという立場の仕事だが、そこには相反する「制作」と「演出」という2つの柱がある。「僕の仕事は制作をしながら、演出もこなします。制作は、タイムスケジュールを組んだり、様々な発注をします。そしてなにより、予算の調整があります。演出は、照明やモデルの動き方、全体のメージを考えたり。まったく使う脳みそが違うのです。ときには、演出したいことと予算が合わないという葛藤も。これらを別々に担当するところもありますが、僕は予算もわかりながら、それに伴った演出で、よりよいものを提案していきたいです」