趣味が高じて仕事につながった、独自のレザー加工
皮革製品のOEM生産をはじめ、2008年秋冬からスタートした「有限会社ヴァード」オリジナルのレザーブランド“blackmeans”のデザイン、加工を手がけている有賀さん。アパレルで販売とプレスのアシスタントとして働いていた有賀さんが、その後、レザーウエアの仕事に携わるようになったのは、ごく自然の成り行きだったという。「レザーが好きで、そのもともとのきっかけになったのは、パンク、ハードコアといった音楽の世界。レザーアイテムを新品のまま着るのではなく、独学で身につけた加工技術で、着古した雰囲気を作って楽しんでいました。着ていれば自然とつくシワを手作業で作りだすのですが、好きでやっていたことが仕事につながるのは、うれしいことですね」
仕事道具は、この手
“blackmeans”では、有賀さんを含むメンズスタッフ3名、レディーススタッフ1名、小物類のスタッフ1名の計5名で活動。一人のスタッフが、1つのデザイン、加工をトータルで手がけている。デザインしたアイテムを岐阜の工場で縫製し、着古したように両手を使って加工するのが有賀さんの仕事。手で仕上げるレザー加工は、大量生産することができないので、世界的にみても数少ない技術だそうだ。「水や薬品に通したり、アイロンで熱をかけたりして形をつけます。加工しやすい皮革作りから手がけているので、調整しやすくはなっているのですが、夏の最中、1,800着近くのジャケットを加工したときには、途方に暮れましたね(笑)」表情豊かなシワや、しなやかな手触りなど、一つとして同じものがないのも魅力。すべては蓄積された経験から生まれている。
文化で得た一番の財産は、同じ言葉で話せる友人
スタイリスト科を卒業後、ファッション流通専攻科に進み、計3年間の学生生活を過ごした有賀さん。クラスメイトだった友人はスタイリストとして活動している人が多く、デザイナーとスタイリストとして仕事で出会うこともあるそうだ。「学校にいるときから交流のあった人たちとは、今もつながっています。文化の卒業生とは、同じ言葉で話せるのがいいですね。空気感というか、何か特別なものを感じます」。また、後輩である文化の学生たちに、今の仕事を通してファッションの楽しさを伝えていきたい思いも。「僕らが学生のころは、原宿がすごくおもしろい時代でした。授業とはまた別のところで学んだことも多く、勢いのあった時代に先輩から学んだことを、後輩たちにも伝えていきたいですね」