文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

“CYDERHOUSE”デザイナー 岡本 裕治 1983年生まれ。石川県出身。服装科入学後、一年後に編入し、2006年アパレルデザイン科を卒業。在学中より、大貫憲章氏(音楽評論家、DJ)の「ロンドンナイト」の手伝いをするほか、宇川直宏氏のクラブ「Mixrooffice」にてインターン研修を始める。皮革のオーダーメイドから服作りをスタートさせ、2007年、友人と共にブランド「Cidermouse posse」名義で一年間活動。2008年に独立し、自身のブランド「CYDERHOUSE(サイダーハウス)」を立ち上げる。2010年から展示会を開催するなど、幅広い分野で活動中。

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ライター 秋山 由佳里

文化服装学院ファッション流通専門課程卒業。編集プロダクションを経て、文化出版局『ミセス』編集部に在籍後、独立。フリーの編集・ライターとして活動。

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“CYDERHOUSE”デザイナー 岡本 裕治

ファッションを通して“活力”を発信していきたい

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。
今回ご登場いただくのは、新進気鋭のブランド“CYDERHOUSE”のデザイナーとして活躍する岡本裕治さんです。

ファッションと音楽の融合を目指して

文化服装学院在学中から、大貫憲章氏(音楽評論家、DJ)のイベントの手伝いをしたり、宇川直宏氏(映像作家、グラフィックデザイナー、大学教授)に師事するなど、ファッションと音楽の世界からさまざまなインスピレーションを受けてきた岡本裕治さん。オリジナルブランドの名称“CYDERHOUSE”も音楽から発想を得たもので、「“CYDER”とは、もともとイギリスのパンクス達が飲んでいた安い発泡酒のことで、<カオスU.K.>というバンドのリミックスの曲名でもあります。そんな日常を楽しむためのお供“CYDER”をつくる場所としての“HOUSE”でありたいと考え、ブランド名に決めました。パンクで、民族的で、サイエンス・フィクションな世界観を、洋服で表現できればと考えています」。

皮革のオーダーメイドから服作りのキャリアをスタート

文化を卒業後、2007年に友人と共にブランド「Cidermouse posse」を立ち上げた岡本さんですが、仕事としての服作りは、在学中に手がけた皮革のオーダーメイドが始まりだそう。「アパレルデザイン科の授業で製作した革ジャンの評判がよくて、それを見た音楽関係の人たちからオーダーを受けるようになったのがきっかけです。初めの1年は5~6着ほど。デザインから、皮革選び、仮縫い、皮革の加工まですべて一人でやっていましたね」。そんな岡本さんが、文化で学んで本当によかったと思うのは「自然に洋服が作れていること」だとか。「デザインのことはともかく、洋裁の基礎やパターンを身につけられたことが一番大きいですね。コレクションは縫製を外注していますが、オーダーメイドはすべて自分たちで製作しているので、日々、実感していますし、とても大切なことだと思います」。

同級生である妻が一番の理解者

アパレルメーカーに所属することなく、フリーランスとして活動している岡本さん。「フリーで仕事をするのは、自由さえも、すべて背負うことになります。自分でやらないと気がすまないので、つい抱え込んでしまうのですが、文化の同級生や後輩に協力してもらうこともあります。手さぐりで始めた展示会も、人づてにスタッフを紹介してもらって経験を積むことができました」。中でも一番の理解者で、的確なアドバイスをくれるのが、同級生でもある奥さま。「学生時代から僕は夜遊びばかりしていたのですが、妻はまじめなタイプ。お互い、ものを全然違う視点から見ているのですが“おもしろい”と思うものは一緒なんです。デザインを描いたら、ときどき妻にチェックしてもらうのですが、大幅に書き直すこともあります(笑)」


2012年春夏コレクション<DADADA>のニット。
手にしているのは、ウルトラ怪獣の“ダダ”。


某先輩からいただいた、鮮やかな青が目を引く革ジャンをカスタム。左肩にスケートのデッキテープが。

ストーリー性のあるデザインで“ワクワク”させたい

2010年からスタートしたコレクションでは、<スイマー>、<マーマン>(アメリカの半魚人のキャラクター)、<DADADA>(芸術運動『ダダイズム』と、ウルトラシリーズの怪獣“ダダ”をフィーチャー)といったキャラクターをイメージソースにしたデザインを発表。<DADADA>のコレクションでは、ウルトラ怪獣の“ダダ”好きが高じて、「円谷プロダクション」とのコラボレーションアイテムも製作しているというから驚きだ。「『円谷プロダクション』には二度ほど断られたのですが、熱意が通じて実現することができました。<マーマン>のコレクションでは、皮革やニットで魚のウロコを表現。デザインをしているときの“ワクワク感”を一緒に楽しんでもらえたらうれしいですね」

最終目標は家をつくること!

仕事道具であり、財産でもあるのが、左の写真のスケッチブック。いつも持ち歩いていて、気になるデザイン、生地、切り抜きなどをストックしているという。「夜中におしゃれそうな映画を流して、ぼーっとしながらデザインを書きとめたりしています。最近は映画が好きで、イタリアの古いものやSF全般を見ます。写真集を見たり、展覧会に行ったり、そんな日常のことからコレクションのテーマを漠然とイメージして、最終的にそれらを繋ぎ合わせていくことが多いですね」。また、デザイナーとして自分の違う一面を引き出してみたい、という思いも。「デザインを通してやりたいことはいくつもあって、ストーリーのあるファッションショーや、別のブランドにデザイナーとして参加することにも興味があります。そして、最終目標は“ハウス”をつくること。おもしろいものを作っていきたいですね」。
※この取材内容は2012年2月時点のものです。


2010年春夏コレクション<スイマー>のTシャツ。


デザインを書きとめたり、生地や切り抜きを貼っているスケッチブック。


(左)手で描いたデザインの仕上げはパソコンで。「だいぶお世話になっている(!)」そう。
(右)皮革のオーダーメイドは、デザインから縫製まで担当。最近は、ぬいぐるみ職人を育てているとか。


(左)皮革のオーダーメイド。牛ドラムを使用した定番ライダース。
(中央)2010年春夏コレクション<スイマー>より。
(右)皮革のオーダーメイド。スエードのミリタリーコート。


2011年秋冬コレクション<マーマン>より。 中央のライダースジャケットは、軽く、保温性があり、やわらかい鹿革を使用。 右は、鹿革のヌメにボンディング加工を施した、一重仕立て。

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