ファッションと音楽の融合を目指して
文化服装学院在学中から、大貫憲章氏(音楽評論家、DJ)のイベントの手伝いをしたり、宇川直宏氏(映像作家、グラフィックデザイナー、大学教授)に師事するなど、ファッションと音楽の世界からさまざまなインスピレーションを受けてきた岡本裕治さん。オリジナルブランドの名称“CYDERHOUSE”も音楽から発想を得たもので、「“CYDER”とは、もともとイギリスのパンクス達が飲んでいた安い発泡酒のことで、<カオスU.K.>というバンドのリミックスの曲名でもあります。そんな日常を楽しむためのお供“CYDER”をつくる場所としての“HOUSE”でありたいと考え、ブランド名に決めました。パンクで、民族的で、サイエンス・フィクションな世界観を、洋服で表現できればと考えています」。
皮革のオーダーメイドから服作りのキャリアをスタート
文化を卒業後、2007年に友人と共にブランド「Cidermouse posse」を立ち上げた岡本さんですが、仕事としての服作りは、在学中に手がけた皮革のオーダーメイドが始まりだそう。「アパレルデザイン科の授業で製作した革ジャンの評判がよくて、それを見た音楽関係の人たちからオーダーを受けるようになったのがきっかけです。初めの1年は5~6着ほど。デザインから、皮革選び、仮縫い、皮革の加工まですべて一人でやっていましたね」。そんな岡本さんが、文化で学んで本当によかったと思うのは「自然に洋服が作れていること」だとか。「デザインのことはともかく、洋裁の基礎やパターンを身につけられたことが一番大きいですね。コレクションは縫製を外注していますが、オーダーメイドはすべて自分たちで製作しているので、日々、実感していますし、とても大切なことだと思います」。
同級生である妻が一番の理解者
アパレルメーカーに所属することなく、フリーランスとして活動している岡本さん。「フリーで仕事をするのは、自由さえも、すべて背負うことになります。自分でやらないと気がすまないので、つい抱え込んでしまうのですが、文化の同級生や後輩に協力してもらうこともあります。手さぐりで始めた展示会も、人づてにスタッフを紹介してもらって経験を積むことができました」。中でも一番の理解者で、的確なアドバイスをくれるのが、同級生でもある奥さま。「学生時代から僕は夜遊びばかりしていたのですが、妻はまじめなタイプ。お互い、ものを全然違う視点から見ているのですが“おもしろい”と思うものは一緒なんです。デザインを描いたら、ときどき妻にチェックしてもらうのですが、大幅に書き直すこともあります(笑)」