若手では珍しいフリーのパタンナーに
アパレル企業やブランドには所属せず、事務所“(pour la)toile”(プーラトワル)を立ち上げ、現在フリーのパタンナー(外注パタンナー)として活動する水上朋史さん。現在は“fur fur”“wizard”をはじめ、幅広いブランドの仕事を請け負っている。通常フリーのパタンナーは、企業で長年キャリアを積んだベテランが独立してなることが多く、水上さんのような若手は珍しいのだとか。「もともと『とにかくいろんなパターンを引きたい』と思っており、いつかフリーになりたいとは思っていました。予想よりこんなに早く夢が実現できたのは、人の縁とつながりに恵まれたお陰だと思っています」
デザイナーの意図を汲み取ることが第一歩
フリーのパタンナーへの、仕事のオーダーのされ方は実にさまざま。レディース・メンズで多少事情は異なるが、細かい仕様書*に忠実にパターンを起こすこともあれば、イメージ画と参考写真からパタンナーの感性で形を展開することが求められるなど、すべてはデザイナーのやり方次第。「デザイナーさんとは一緒の場所で働いていないので、短い打ち合わせで相手の意図をどう汲み取るかは未だに苦労する部分です。かといって、質問攻めにするのもしつこいので、その人の服装を見たり、趣味の話をしたりして『こういうテーストが好きなのかな?』と、仕事には直接関係ない部分から情報を読み取ることもあります」
*パターンと共に必要な情報(使用する生地、要尺、縫い方、仕上がりサイズなど)を指図した文書。
人を遠隔操作することの難しさ
水上さんがパターンをやっていて一番楽しいのは「全体の形を決めるとき」。形を出した後は、縫製工場の人にイメージ通りに縫ってもらうよう仕様書を作成するが、ここが外注パタンナーとしての力の見せどころだ。「工場の人とは直接話せないことが多いので、パターンと仕様書で言いたいことを伝えなければなりません。指示は書こうと思えば無限に書けるのですが、細かく書きすぎても言いたいことが散漫になるので、間違いやすいポイントを押さえる程度に書いています。仕様書の書き方には気をつけないと、とんでもないものが上がってきてしまうので責任重大です」