枠組みを作らず、依頼が来たものは何でも制作
アーティストのライブ衣装や、テレビ・CM・映画・舞台の衣装、はたまたキャラクターの着ぐるみからプロレスラーのリング衣装まで、ファッション業界という枠を超えてデザイン&制作活動を行う井上 武さん。「もともと『ミシンと布で何かを作りたい』というところから出発しているので、『私たちのコンセプトはこうで、こういうものしか作りません』といったことがありません。カフェのスタッフのTシャツでも、普通の奥様のドレスでも、プロレスラーのマスクでも、頼まれればなんでも面白がって作ります」
限られた納期と予算の中で、一番格好いい衣装に
現在、仕事の中で大きな比重を占めているのが衣装制作。手掛けるものはそのつど異なり、仕事をする相手もスタイリストやイベントの総合プロデューサー、CM制作会社やタレント事務所のスタッフなど多岐に渡る。案件によって求められるものも違ってくるが、「それは大きな問題ではなく、気持ちの切り替えも特にしていません」と井上さん。「まずは相手の要望があって、納期や予算を考えながら一番格好いいものを作ろうという思いでやっています。それに対象が何であれ、一生懸命やるというスタンスに変わりはありません」
オリジナルブランドでは好きなものを表現
2008年からは自身のクリエーションを、ブランド“t.i”として発表している井上さん。「自分の趣味を突き詰めたキワモノだったりするので、バイヤーさん受けは決してよくないです(笑)。でも、スタイリストさんからの問い合わせは多く、t.iの服が雑誌『装苑』に載ったときは、それを見たスタイリストの岡田さん*が気に入ってくださって、映画『曲がれ!スプーン』の衣装に使われたという経緯もあります。t.iはデザイナーというよりも作家的な活動の場なので、展示会やコレクションを絶対しなきゃいけないというルールもないですし、自分たちの好きなことができればいいかなと思っています」
*Vol.005に登場の、スタイリスト・岡田 敦之さん。