仕事はマイペース、かつ着実に
2009年春夏コレクションより、自身のブランドを立ち上げた馬渕さん。現在は生産管理担当と、PRツールなどのビジュアル面を担当する2名のスタッフとともにブランドを運営している。シーズンコレクション前はテーマやイメージについて3人で話し合うが、その後は完全な分担制。展示会に間に合うように、各自が責任を持って作業を進めていく。「スタッフ同士フォローし合えない関係にすることで、責任は重くなりますが、そのぶんやりがいも大きくなると感じています。みんなで夜遅くまで作業することもありますが、スケジュールを守っていれば展示会の直前になって慌てることはそれほどありません。でも実はこう言う私が一番のんびりしていて、周りから『そろそろ作業始めたほうがいいんじゃない?』とよく突っ込まれます(笑)」
女性のための身近な服を作りたい
馬渕さんは文化を卒業して2年間アパレル企業に勤めた後、オーダードレスの制作をしていた時期がある。そこでさまざまな女性と直接向き合い気付いたのは、服が持つエネルギー。「ドレスをまとうことで、女性の表情がどんどん生き生きとしてくるんです。改めて服作りの楽しさを実感して、『女性のための身近な服を一生作り続けていきたい』と思いました」。ただし、同時に見えてきたのは技術の不足。そこで馬渕さんは、独学でパターンを勉強したり、レディース・メンズ両方のブランドでデザイナーとして経験を積んだりすることで高い技術や最新の知識を習得していった。「メンズブランドに在籍していたときは、体の動きを考えた服の機能性や、立体裁断からパターンをCAD用にデータ化する一連の流れを知ることができました。今量産用のパターンを引く際、ここでの経験が生きています」
自分なりの方法でアパレル業界を活性化したい
会社に所属していたときよりも自分の時間が増え、オン・オフのコントロールがしやすくなったことに満足しているという馬渕さん。独立して1年目は初めて経験する経営面での苦労があったが、今は充実した日々を送っている。「毎日を楽しく過ごすためには、自分らしく生きられる"基地"のような場所を作ることが大切だと思います。私の基地はまだ小さいかもしれませんが、今後も基地を軸にネットワークを広げていきたいです」。またブランド運営とは別に、アパレル業界全体を活性化するような活動も行っていきたいと語る。「将来的にはベテランと若い学生が交流したり、技術者から専門的な話が聞けたりする技能継承の場を提供できたらいいですね」